犬のフィラリアという病気の仕組み

フィラリア症とは、犬の体内にイヌフィラリア(和名:犬糸状虫)が入りこみ、成長した虫が最後の場所(最終寄生場所:心臓や肺の動脈)に住みついた結果、さまざまな形で犬の体調を悪くする病気です。この状態を「フィラリアに感染した」といいます。

犬の種類、年齢、体重やそのときの体調にかかわらず感染するリスクのある病気です。

犬フィラリアのライフサイクル

フィラリアの感染経路について

イヌフィラリアは、蚊によって運ばれ、広がっていきます。
いろんな種類の蚊がいますが、身近なところではヒトスジシマカやアカイエカが多いです。

蚊を介した感染のステップ

STEP1
蚊が、フィラリアに感染しているイヌの血液を吸うとき、
血液中の子虫(ミクロフィラリアといいます)を一緒に取り込みます。
これにより、ミクロフィラリアは蚊の体内に入ります。

STEP2
ミクロフィラリアは、蚊の体内で2回脱皮すると、イヌへの感染能力を持った幼虫(感染幼虫といいます)になりますが、
そのためには一定の気温が必要です。
寒い冬の間、予防しなくてもよい期間があることは、このためです。

STEP3
感染幼虫は、蚊が血液を吸うときに使う“ストロー”状の場所(器官)に移動します。

STEP4
感染幼虫に寄生された蚊が犬に吸血するとき、その刺口から犬の体内にミクロフィラリアが入り込みます。
この時点では、犬の体内に侵入しただけで、感染したことにはなりません。
当然ながら、犬にまったく変化はありません。


潜伏期間について

フィラリア症は、感染幼虫が犬の体内に入ったからといって、すぐに体調に変化がでるものではありません。
フィラリアが最終寄生場所に住みついて、何年もかけて、病気を進行させたころ、つまり心臓や肺の血管がボロボロになった時に気がつくことが多い病気です。
予防をせず、検査もしていなかった場合、ひどい症状が出たときにはじめて気がつくこともあります。

犬の体内に入った感染幼虫はどこへ

犬の体内に入った感染幼虫は皮膚の下(筋肉や脂肪の周りなど)で生活しながら、 2回の脱皮を繰り返して、最終寄生場所に移動できる準備を整えます。
その準備期間に約2ヶ月は必要とされています。

準備ができたフィラリアは血管を通って、心臓や肺の血管に移動していきます。
ここまでにおよそ半年はかかるといわれています。

その後、オスとメスのフィラリアがそろったとき、新しいミクロフィラリアが生まれはじめます。
このミクロフィラリアが蚊に吸血されることで、次の犬にフィラリアが広がってしまうことになります。

フィラリアが寄生した犬はどうなるの

完全に成熟したフィラリアは、長さ15〜30cm程度の“そうめん”みたいな形をしています。
多くの成虫はひっそりと暮らしていますが、長い時間を経て、肺の血管や心臓の内面を傷つけていきます。
その結果、体中に血液を送り出す心臓や肺の働きが邪魔されてしまい、「乾いた咳をする」、「運動をいやがる」などの軽い症状から、腎臓や肝臓の働きまで影響が出ることで、より深刻な症状がみられるようになってきます。

深刻な症状がみられるのは、フィラリアが感染してから何年も経ってからの場合が多いです。

また、まれに、ひっそりと暮らしていたフィラリアが突然に暴れだし、急激な症状の悪化がみられることがあります。 この場合、救急治療が必要になります。

犬フィラリアのライフサイクル